よくある症状
尿の出が悪くなる、尿が近い、尿が漏れる
前立腺肥大症
年齢とともに前立腺が大きくなり、尿の出が悪くなる病気です。
男性だけに起こり、年齢とともに前立腺が大きくなった結果、尿の出が悪くなる病気です。肥大した部分が尿の通る所を圧迫するために、尿の線が細い、途中で尿が途切れてしまう、また膀胱の中の尿を十分排出できなくなると残尿感や頻尿を伴います。最悪の場合、尿がまったく出なくなる(尿閉)こともあります。
検査は?
- 前立腺触診
- 示指で前立腺を診察し、大きさ、炎症がないかを確認します。がんが見つかることもあります。
- 前立腺超音波検査
- 前立腺の実際の大きさ、形がわかります。
- 尿流量測定
- おしっこの出る勢いを数値で測る機械です。また、尿道に管を入れずに残尿を測ることができます。
治療は?
- A.内服薬
- α(アルファ)ブロッカーという、前立腺の中を広げる薬が主流ですが、植物性エキスや抗男性ホルモン(肥大を小さくする作用)もあります。
症状が軽い場合は薬が効きやすく、通院治療をします。
- B.手術治療
- お腹を切らずに、内視鏡を使って前立腺肥大を切除する方法(経尿道的前立腺切除術)です。腰椎麻酔(下半身の麻酔)下で行いますので痛みはなく、40-50分の手術です。10日位の入院が必要です。症状が強い場合や薬の効きにくい場合に必要となりますが、病気自体を根本的に治すことを目的とした治療法です。
- C.前立腺高温度治療
- 尿道に局所麻酔(ゼリー)をして尿道に管を入れ、50分間前立腺に熱を加える方法です。簡便に行うことができ、体への負担がほとんどないため、ご高齢の方、体力の低下がある場合でも施行可能です。
- D.前立腺部尿道ステント
- 本来、症状が強いため手術が必要でも、心臓の機能低下などで危険を伴う場合は局所麻酔をして前立腺の部分にチタン製のステント(細い網でできた数cmの筒状のもの)を留置する方法があります。極力、ご自身で排尿できるように治療を行っています。
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神経因性膀胱
糖尿病や脳梗塞に続いて起こることの多いもので、尿の出が悪くなったり尿が近くなったりします。
糖尿病や脳梗塞、脳出血に続いて起こることの多いもので、尿の出が悪くなる、尿が近くなる、尿が漏れるなどの症状を来たします。膀胱の力が弱くなったり、反対に敏感になりすぎることから起こります。
男性にも女性にも発症します。
検査は?
- 膀胱内圧測定
- 膀胱に細い管を入れて、膀胱の大きさや収縮力(尿を押し出す力)を測定します。
- 尿流量測定
- おしっこの出る勢いを数値で測る機械です。また、尿道に管を入れずに残尿を測ることができます。
治療は?
- 膀胱の力が弱くなり、尿の出が悪い場合は、膀胱の収縮力を強くする薬と、尿道を広げる薬が効果的です。逆に膀胱が敏感になっている場合は、膀胱の神経を落ち着かせる薬が効果的です。いずれも、ほとんどの場合外来通院で治療可能です。
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過活動性膀胱
特に中高年の女性に多く、尿が近い、間に合わずに漏れてしまうなどの症状が出ます。
原因は明らかではありませんが、全国に500万人以上の患者さんがいるとされています。ほぼ症状から診断が可能ですので、苦痛の伴う検査は通常不要です。
治療は?
- 膀胱の神経を落ち着かせる薬(抗コリン薬)が最も効果的ですが、漢方薬なども用いられます。
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腹圧性尿失禁
重い物を持ったり、咳やくしゃみ、運動した際に不意に尿が漏れるものです。
重い物を持ったり、咳やくしゃみ、運動した際に不意に尿が漏れるものです。出産、加齢、閉経、肥満などで膀胱を支える部分が弱くなるために発生すると考えられています。
検査は?
- 膀胱造影
- どのくらい膀胱の出口の部がゆるんでいるのかをレントゲンで確認します。
- パッドテスト
- 活動中にどの位尿が漏れているかを測定する検査です。
治療は?
- 軽症であれば、骨盤底筋体操(肛門のあたりの筋肉を締めて鍛え直す方法)が効く場合があります。他に薬の内服治療もありますが、漏れが多い場合は手術療法の適応です。
手術はTVTという細いテープを尿道の周囲に通す方法を行っています。腰椎麻酔を行い、下腹部2箇所と膣壁に小さな切開を行い短時間で終了可能です。5~7日の入院で施行しています。
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悪性の病気
前立腺がん
前立腺肥大症と同様の症状で見つかる場合もありますが、近年では検診の 血液検査(PSA測定)で無症状のまま早期がんとして見つかることが多くなっています。
食生活の欧米化に伴い、増加傾向にあり泌尿器科では最も多いがんです。 前立腺肥大症と同様の症状で見つかる場合もありますが、近年では検診の血液検査(PSA測定)で無症状のまま早期がんとして見つかることが多くなっています。PSAは数値として4.0ng/ml以下が正常ですが、がん以外の病気である前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇することがあります。そのためPSAが4.0ng/mlを超えた場合、確定診断のためには前立腺の組織を針で採取し、病理検査でがんかどうか調べる‘前立腺生検’が必要となります。
検査は?
- <前立腺生検の方法>
- 腰椎麻酔を行い、直腸より針で前立腺の組織を数箇所採取し、止血をします。1泊2日の入院で行っています。約1週間で結果が判明します。
治療は?
- <前立腺がんが見つかった場合の治療>
- まずCT検査を行い、がんが周囲に広がっていないかどうか確認をします。PSAの数値により骨に転移がないかどうか骨シンチグラムで確認する場合があります。
治療法としては
A. 内分泌療法 B. 根治的手術 C. 放射線療法
の3種類がありますが、がんの広がり具合や年齢、呼吸器や心臓などの合併症の有無、そして患者さん御本人の意向を交えて決定します。当院では内分泌療法が可能です。
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膀胱がん
血尿で見つかることがほとんどで、手術が必要です。
血尿で見つかることがほとんどで、手術が必要です。内視鏡検査で診断します。がんの程度により2種類に分かれます。1つは表在性のがんで、膀胱内腔の浅い所にあるもので、転移は起きず内視鏡手術で切除できます。膀胱がんの多くがこの表在性がんです。もう1つは浸潤性のがんで、膀胱内腔の深い部分である筋層という所まで進んだ状態であり、膀胱を摘出する必要があります。さらに、転移が起きる可能性があります。
検査は?
- <表在性膀胱がんの治療>
- 腰椎麻酔を行い、お腹は切らずに内視鏡を使って膀胱内のがんを切除します。ただし、約半数の方に再発が起こるため、定期的な検査が必要です。また、場合により再発予防の抗がん薬などを膀胱に注入する治療を行うことがあります。10日位の入院で治療をしています。
治療は?
- <浸潤性膀胱がんの治療>
- 膀胱を摘出し、尿路変更(尿の出口を作る手術)が必要になりますので、通常総合病院での治療となります。
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腎臓がん
症状が出にくく、人間ドックの超音波検査で見つかることが多いもので、手術が必要です。
症状が出にくく、人間ドックの超音波検査で見つかることが多いもので、腎臓を摘出する手術が必要です。従来は大きく皮膚を切開して手術をしていましたが、近年は腹腔鏡というカメラを用いて、皮膚に小さい穴をあけて行う方法が増えています。いずれも総合病院での治療となります。
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尿管結石
尿管の結石
腎臓の出口でできた結石が尿管に移動すると背中やわき腹に激痛が走ることが多く、自然に排石されない場合は結石を砕く治療が必要です。
腎臓の出口でできた結石が尿管に移動すると背中やわき腹に激痛が走ることが多く、自然に排石されない場合は結石を砕く治療が必要です。
検査は?
- レントゲン検査とCT検査で診断します。
治療は?
- 結石の大きさと位置、痛み具合により決定しますが、小さい結石はまず自然に排石するのを期待し、排石されない場合は砕石治療を行います。結石が大きい場合は通常砕石が必要になり、尿管の中間から上の方に位置する際は体外衝撃波砕石術(ESWL)が、中間から下方に位置する際は経尿道的尿管結石砕石術(TUL)が適応となります。当院では経尿道的尿管結石砕石術(TUL)が施行可能です。
- <経尿道的尿管結石砕石術(TUL)の方法>
- 腰椎麻酔を行い、尿道から尿管鏡という細い内視鏡を挿入し、尿管の中にカメラを進めて直接結石を見ながら結石を砕きます。2泊3日の入院で治療しています。
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膀胱の結石
尿管から膀胱に移動した結石が排石されなかったり、また膀胱の中で結石ができることがあり、結石を砕く治療が必要です。
尿管から膀胱に移動した結石が出てこなかったり、また膀胱の中で結石ができることがあり、結石を砕く治療が必要です。
検査は?
- 内視鏡やレントゲンで診断します。
治療は?
- 尿管の結石と同様に、経尿道的尿管結石砕石術(TUL)が施行可能です。
- <経尿道的尿管結石砕石術(TUL)の方法>
- 腰椎麻酔を行い、尿道から尿管鏡という細い内視鏡を挿入し、尿管の中にカメラを進めて直接結石を見ながら結石を砕きます。2泊3日の入院で治療しています。
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炎症(感染症)
膀胱炎、腎盂腎炎
膀胱炎、腎盂腎炎:女性に多く、尿道から膀胱に細菌が入り、炎症を起こして痛み、不快症状を来たすのが膀胱炎で、細菌がさらに腎盂まで移動すると 高熱を伴う腎盂腎炎に発展することがあります。
女性に多く、尿道から膀胱に細菌が入り、炎症を起こして痛み、不 快症状を来たすのが膀胱炎で、細菌がさらに腎盂まで移動すると高熱を伴う腎盂腎炎に発展することがあります。
検査は?
- 顕微鏡での尿検査、尿中の細菌の種類を調べます。発熱がある場合は腎盂腎炎が疑われるため、血液検査も必要です。
治療は?
- α(アルファ)ブロッカーという、前立腺の中を広げる薬が主流ですが、植物性エキスや抗男性ホルモン(肥大を小さくする作用)もあります。
症状が膀胱炎では、内服の抗生物質を5-7日服用することで、ほとんどの場合完治します。しかし、慢性の膀胱炎になっていることがあり、その際は治療期間を要します。腎盂腎炎では、内服の抗生物質よりも点滴の抗生物質の方が効果的ですので、4-5日間の入院で治療を行うのが確実です。
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前立腺炎
尿道から細菌が前立腺に入り、下腹部の不快症状などを来たします。
尿道から細菌が前立腺に入り、下腹部の不快症状などを来たします。炎症が強い場合は発熱を伴います。
検査は?
- 尿検査、前立腺の触診、時にマッサージを行い、発熱がある場合は血液検査も必要です。
治療は?
- 抗生物質、植物性エキス薬の内服を行いますが、膀胱炎よりもやや治療期間を要します。 発熱がある場合は、点滴の抗生物質の方が効果的ですので、4-5日間の入院で治療を行うのが確実です。また、生活習慣が炎症に影響する場合があり、飲酒、疲労、ストレス、長時間椅子に座る(前立腺を圧迫します)などが注意点です。
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尿道炎(性感染症=STD)
淋菌、クラミジアといった特定の病原体が性行為により感染し、尿道に炎症を起こすものです。
淋菌、クラミジアといった特定の病原体が性行為により感染し、尿道に炎症を起こすものです。尿道の痛みや、尿道口からの膿汁分泌が起こります。
検査は?
- 現在では尿中の淋菌、クラミジアを確認できるため、苦痛を伴う尿道の検査は不要となっています。約1週間で結果が出ます。
治療は?
- 抗生物質の内服治療を行いますが、病原体の検査結果により薬の種類を変更して治療することもあります。重要なのは、相手の女性も産婦人科で検査を受けてもらい、もし感染があれば治療を行うことです。双方が治療しなければ再び感染してしまいます。
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腎不全、人工透析
主に慢性の腎炎が長年続いた結果、腎臓の働きが弱ってしまい、水分や体の中にできる毒素を十分に排泄できなくなると(=尿毒症)、人工透析もしくは腎臓移植が必要になります。
主に慢性の腎炎が長年続いた結果、腎臓の働きが弱ってしまい、水分や体の中にできる毒素を十分に排泄できなくなると(尿毒症)人工透析もしくは腎臓移植が必要になります。現在、腎不全の原因で最も多いのは糖尿病から起こる糖尿病性腎症です。
検査は?
- 体のむくみなどの症状がでることは少なく、多くは無症状です。検診の尿検査で蛋白尿が見つかり、慢性腎炎が判明することが多く、血液検査のクレアチニンという数値で腎臓が実際にどのくらいはたらいているか判断します。慢性腎炎には多くの種類があり、腎不全になりにくいタイプかなりやすいタイプか、ある程度の予測が可能です。詳しい種類を判定するため、腎臓の組織を針で採取して病理検査を行う腎生検という検査を行うのが望ましいと考えられます。ただし、腎炎の種類によっては副腎皮質ステロイドが効く場合もありますが、特効薬とまでは言えないため、食事や塩分のコントロールや血圧の維持、そして定期的な血液検査などが重要となります。
治療は?
- 末期腎不全に至った場合は、人工透析あるいは腎移植が必要になります。人工透析には血液を循環させて水分や毒素を取り除く血液透析と、腹腔内に管を留置し腹膜を介して水分、毒素を取り除く腹膜透析とがあり、どちらかを行います。血液透析を行うには、血管シャントという、通常前腕の動脈と静脈をつなげて静脈を太くする手術を行っておく必要があります。透析は病院で週2回もしくは3回、一回に3-4時間行います。腹膜透析は自宅で行うもので、主に機械を利用して基本的には毎日施行します。治療効果に大きな差はありませんが、我が国では透析患者さんのおよそ95%が血液透析を受けています。当院では血液透析が可能で、血管シャント手術も行っています。
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